呼応するチカラ
「例に出すお店がどこにもない」初めてお会いした際の市川社長の印象的な言葉です。「どこにもないお店」をどうやって実現するのか。完成に至るまで道のりは、どこにもないお店への「想い」から始まる「キャッチボール」の連続でした。
事業コンセプトをお聞きし、空間やパッケージに表現。「想い」に呼応してデザインする、デザインに呼応して、さらなる「想い」が出現する。この繰り返しで、計画は進みました。
参拝客をお店に誘導する
参道に立地するため、お客様の動線は明確です。はじめに神社を目指し、参拝後に、休憩や土産品を購入します。このお客様を確実にキャッチするために、アプローチ動線や建物の魅せ方に工夫をしました。
神社を目指す向きに喫茶コーナーの窓とサブ出入り口を設け、「なんとなく」店舗の様子を見ながら神社を目指せる外観。参拝後に神社から下る際は、大きなガラス面を設け「しっかり」と内部をみせ、店舗へ誘導する外観。出入口は、通り抜けが可能なようにし、店舗の一部が参道になったような賑やかな往来を想定しています。
一体空間を分節し、出来事が共有化される空間づくり
店舗内は、主に ①喫茶スペース ②物販スペース ③バックオフィスから構成されています。さらに小さなゾーニングを行って、参拝帰りの気持ちに合わせた複数の居場所づくりをしています。同時に、お客様が喫茶と物販スペースどちらにいても、どちらの魅力も感じながら滞在し、相乗効果がでるような配置をしています。
まだ見ぬお店の“らしさ”を探す
お店のグラフィックデザインは、ロゴマークづくりから始まりました。ヒアリングでは新しくお店を始めることになったきっかけや、お茶づくりで大切にされてきたこと…これまでのこと、これからのこと、広くお話をうかがいました。
そうしてうまれたのが、一筆書きの椿がシンボルのロゴマークです。「新しいお店と丁寧なお茶作りが、椿大神社の歴史とともに続いていくように」という願いが込められています。椿大神社に訪れる女性の参拝客をメインターゲットとし、幅広い年代の女性に受け入れられる落ち着いた可愛らしさのロゴマークに仕上げました。
四季の移ろいを感じる野の庭
いろいろな樹木や草花がが植えられた、アプローチの野の庭。小さいながらも奥行きが感じられます。
木製の格子が目を引きます。
仄暗い土間と大きな引戸
木製の扉を開けると、仄暗い土間空間。奥には季節の飾り棚。スリット窓から入る自然光も優しい雰囲気。
大きな引戸に設けられたくぐり戸からカフェスペースに入ります。
開放的なカフェスペース
くぐり戸を抜けると明るい吹き抜けのあるカフェスペース。窓からは木製格子越しに庭の樹木が楽しめます。
階段したの小さな部屋や手洗いコーナーにも工夫があります。
集い、学ぶ、セミナースペース
2階はワークショップやお茶会ができるセミナースペース。日本茶教室を開催したり、地域の方がイベントをすることも。
point
一冊の本をつくる様に
必要とされる様々な機能や空間、素材の条件を整理し取捨選択。分解したり、動かしたり、再構築したりを繰り返します。一冊の本を編集する様に設計を進め、空間の質を上げて行きます。
槻岡佑三子
スタジオソイ一級建築士事務所
point
四季の移ろいをロゴマークにも込めて
お茶を楽しみながら、セミナーやコンサートを行うなど、「人が集まる場」を地域に提供したいという尾堤さんの思いがありました。グラフィックもお茶のイメージにとらわれず、地域に愛される親しみやすさ・あたたかさと、ゆったりとした時間の流れを感じられるものを制作しました。
沢田寛子
(株)デザインコンビビア
teamWHAIS
オリーブ会員有限会社松本家具製作所
お施主様も、建築にこだわりがある方なのでとても素敵な空間でした。
ひとこと
はる・なつ・あき・ふゆ
“日本の四季の移ろいを、お茶を通して素敵に感じて欲しい”という想いで「はる・なつ・あき・ふゆ」からひと文字ずつ取って『はなあゆ』と名付けました。お茶を楽しむ時間と空間を提供し、無添加の正しい食を伝え、地域のコミュニティになるよう心掛けています。
茶寮はなあゆ(おづつみ園) 尾堤 宏様
ショップの表情を伝える
今までの店は2階にあり「何の店なのか」が伝わりづらい状況でした。そこで道を歩く人にも店の個性が伝わるように、空いている1階の駐車場に移動しました。
器や美術品のセレクトショップは『くらしの器と自然食品』の店として生まれ変わり、ワイン会や絵手紙教室などの為のレンタルスペースは3階から2階へ移動。空いた3階はテナント貸しとなり、新たな収益をもたらしました。
主役は商品の持ち味
店で取り扱う商品は、オーナーの目利きで選び抜かれたものばかり。それぞれの品、一つ一つが引き立つよう道路面は大きなガラスでクールなイメージに。真っ白ではなく薄いグレーでまとめた室内にポイントで無垢のカウンター材を配置し、手作りの器や自然食品の持ち味を引き立てています。
グラフィックデザインも新しく
グラフィックデザインもデザイナーにより一新しました。
「器も食品も人の手から生まれ、居心地の良いお店には自然と人が集うもの。シンプルながら人の温かさを感じるデザインを。」との想いのもと、ロゴマークが完成しました。色味は特に細かな検討を重ね、オーナーのアイデアにより鶸色(スズメより少し小さい鳥の鶸(ひわ)の羽根に見られるような黄緑色)を用いています。
point
匣に行けば良いものが手に入る
お打合せで匣さんに伺う度に何かを購入してしまい、我が家の食器棚が日に日に豊かになっていきました。次に行ったら何があるかな?そんなワクワクをお客様とも共有できる外観デザイン、内装デザインを目指しました。
齋藤文子
3110ARCHITECTS一級建築士事務所
point
前面をガラス張りにし、外からの光が店内に十分に取り込まれるようなりました。さらに内装のナチュラルな質感が、並ぶ器や食品の映える明るい店内になり、街を歩く人が立止まって店内を覗いていく光景を見て、一緒にお店作りできて嬉しい気持ちになりました。
佐田あゆみ
株式会社栄港建設
point
お店のコンセプトとイメージを凝縮
ロゴマーク制作は、器・野菜・家・土など様々なモチーフがアイデアとして出てきました。器も食品も人の手によって生まれるものということから、採用となったマークは“人”を感じるものとなりました。「人が集う場所にしていきたい」というオーナー様の思いとも共鳴しています。穏やかでありながら個性的な雰囲気は、お店のイメージともピッタリです。
田島未久歩
(株)デザインコンビビア